画面の向こうにあった服に会いに行く。西麻布でひらく「2010年代のネットとファッション」展
タイムラインに流れる画像や動画に夢中になっていたあの頃、私たちの服への憧れやカルチャーの触れ方はどう変わっていったのでしょうか。ストリートからインターネットへと表現の場が広がった2010年代前半の日本のファッションを、実物の衣服や当時の空気感とともに捉え直す展覧会が西麻布で開催されます。

デジタルのタイムラインからこぼれ落ちた記憶を拾い集める
スマートフォンの普及とともに、TumblrやSoundCloud、ニコニコ動画、Twitterといったサービスが日常へ急速に入り込んできた2000年代末から2010年代初頭。ファッションやユースカルチャーと出会う現場は、街中のストリートからインターネットの画面へと大きく広がっていきました。デザイナーや個人がオンラインのプラットフォームを介して直接世界観を発信し、そこに集まった人々によって独自のコミュニティや新しい装いの文脈が形作られていた時代です。
しかし一方で、当時の日本のファッションシーンは雑誌の休刊や廃刊が相次ぎ、発信の主舞台だったブログやウェブサービスも閉鎖が相次ぎました。ネットに散らばった画像や言葉は時の流れとともに分散し、記録そのものが消えてしまったかのように見失われがちです。決して歴史が存在しなかったわけではなく、発信と記録の形が目まぐるしく変わる中で、それらを体系的に保存して読み直す試みが追いついていませんでした。
そうした失われつつあるカルチャーを捉え直すプロジェクトの第一弾として企画されたのが、展覧会「login to the self」です。

バルムングからルルムウまで、時代の空気が息づく部屋
会場では、2010年から2015年にかけて独自の存在感を放っていた日本のファッションブランドの衣服や資料が一堂に紹介されます。並ぶのは、「バルムング(BALMUNG)」をはじめ、「クロマ(chloma)」、「ハトラ(HATRA)」、「ルルムウ(rurumu:)」といった、まさに当時のネット空間と現実のストリートを接続していたブランドのコレクションです。
さらに展示空間では、「ボディソング(BODYSONG.)」やスタイリストの小山田孝司の協力を得て、2000年から2010年代の古着をまるで誰かの部屋のような空間に配置。当時の若者たちが身を置いていた空気感そのものを再現します。衣服だけでなく、アートや音楽、パフォーマンスなどの表現も織り交ぜられ、単なる回顧展にとどまらない複眼的なカルチャーの断面が立ち上がります。
また、出展デザイナーへの貴重なインタビューを収めた冊子「vol. 1 “login to the self”」が、コレクティブ「TOKYO CULTURE RESEARCH UNIT」の自主出版として会場で販売されます。検索エンジンでも辿り着けなくなっている2010年代の記憶を、当時カルチャーの渦中にいた当事者たちの言葉から直接触れられる貴重な機会になりそうです。
夜18時から24時まで。夜の西麻布でカルチャーに没入する
展覧会の舞台となるのは、エイベックス・クリエイター・エージェンシーが運営する西麻布のオルタナティヴ・スペース「WALL_alternative」です。
会期は2026年10月1日から10月24日まで(日曜休み)。大きな特徴は、オープン時間が18:00から24:00という夜の時間帯に設定されている点です。入場は無料で予約も不要。平日の仕事帰りや大学の授業終わりに、少し夜風に吹かれながら立ち寄るのにちょうどいい空間になっています。
当時のインターネットカルチャーを肌で体感していた世代にとっては懐かしく、後追いでそのスタイルに惹かれている世代にとっては新鮮な発見があるはず。スクリーンの向こう側にあった熱量と質感を手触りとともに確かめに、夜の西麻布へ足を運んでみてはいかがでしょうか。
MIREORI TALK

rurumu:とか古着が並ぶ部屋っぽい展示、絶対かわいい!夜24時までやってて入場無料なら、学校帰りにも立ち寄りやすくて最高だね。

18時オープンの夜のギャラリーって珍しいよね。西麻布の落ち着いた雰囲気の中で、仕事終わりに少し寄り道してカルチャーに浸るの良さそう。

ネットの情報って残り続けると思われがちだけど、サービス終了で意外と消えちゃうんだよね。それをあえて実物の服や紙の冊子で再構築する視点がすごく面白い。


